人材業界の現状課題と今後の動向について解説

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、生活様式や働き方は大きく変化しました。また、世界的な経済不安によって業績に大きな影響を受けた企業も多くあります。
働き方や、業績が大きく変わったことにおける人材業界への影響も大きく、今後の運営方針について課題を抱えている企業も多くあるのではないでしょうか。
この記事では、人材業界の課題と、その課題に対して今後どうしていくべきかをご紹介します。
変わりゆく雇用問題に課題を抱えている人材業界の方は、ぜひ参考にしてみてください。
人材業界6つの事業
人材業界のサービスは大きく6つの事業に分類できます。
人材派遣
人材派遣とは、臨時的・一時的な人材活用として、求職者と企業をマッチングさせるサービスです。
人材派遣では、派遣労働者が雇用契約を結ぶのは派遣会社、実際に仕事をするのは派遣先の企業となります。
派遣労働者に日々の業務指示を行うのは派遣先企業ですが、派遣会社が労働者を雇用しているため、福利厚生や給与の支払いは派遣会社が行うのも特徴です。
人材紹介
人材紹介は、求職者と企業をマッチングさせるサービスのことを言います。
企業に対して、人材を紹介し、採用が決定した場合に紹介手数料を受け取るビジネスモデルです。
人材紹介会社は人材を紹介するのみで、求職者は紹介先の企業と直接契約をすることになります。
再就職支援
事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされた従業員に対して、キャリアカウンセリングなどを行うことによって適正な転職先を紹介し、再就職をサポートするサービスが再就職支援です。
従業員を解雇せざるを得ない企業が、従業員の次の働き先を保証するために委託費用を払って代行として依頼します。
業務請負
業務請負は、企業の一部の業務を代行するサービスです。企業が社内で行わなくてもよいノンコア業務や定型業務を切り出し、運用を任せます。
人材派遣と混同されがちですが、業務請負の場合は指揮監督は請負会社が担う点が大きな違いです。
キャリア形成支援
セミナーや研修などを提供し、その後の就職支援までを一貫して行うサービスをキャリア形成支援サービスと言います。
「半年間のwebデザイン講座を受けてwebデザイナーとして就職」といったように、需要の高いIT系の専門スキルを身に着けられるものが人気です。
講座を有料にしてお金を受け取るものや、就職が決まった場合に企業からの紹介料を受け取るものがあります。
求人広告媒体運営
求人広告媒体運営企業は、企業の求人情報をフリーペーパーやwebページなどのメディアに掲載し、求職者を集めます。
駅などで見かけるフリーペーパーやネットで求人を調べる時に先頭に出てくるwebメディアをイメージすると良いでしょう。
人材を募集する企業に対して、募集人数や、企業の強み、求職者に求めることなどをヒアリングし、求職者に響く広告を作成します。
また、企業の求人に対する課題から、求める人物像や求職者の興味を集める企画を提案するなど、人材コンサルタントとしてのサービス提供をすることもあります。
人材業界における課題は?
人材業界には、その時の経済状況や時代背景によってさまざまな課題があります。
現在の日本においては、労働人口不足や働き方の多様化、キャリアの考え方の変化による課題が大きいでしょう。
働き方や雇用形態の変化
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、テレワークが急速に浸透しました。通勤時間を気にする必要がなくなったため、都市部から地方へ移り住む人や、旅をしながら働くワーケーションなども人気です。そのため、求職者にとって働きやすい働き方を提案できる企業の方が、求職者が集まりやすい傾向になるでしょう。
人材業界は求職者のニーズをしっかりと把握した上で、企業に対して柔軟な働き方の提案ができるかが今後の課題になります。
また、以前の日本では終身雇用が当たり前でした。
しかし、リーマンショックの例にもある通り、先行きを見通せない時代に突入し、安定し雇用し続けることが難しくなったという企業もあるでしょう。
終身雇用は、「自社の理念に合った人材を長期的に育成する」という効果はありますが、年功序列による賃金体系や、流動的な人材活用は能力が高い人に対して対価が見合わないこともあり、良い人材を獲得しにくいという側面もあります。
そこで最近注目されているのが、欧米型の「ジョブ型雇用」です。
「ジョブ型雇用」とは、職務や勤務地、時間などの条件が明確に決まっている雇用のことを言います。
スキルを条件として採用活動を行うため、即戦力としての人材を獲得しやすいのが特徴です。
キャリア形成が重要視
自分の意思で仕事が選べる今、転職も当たり前となり、求職者にとってはキャリア形成が重要視されています。
企業は、正社員にだけではなく、契約社員や派遣社員も含めた人材に対し、スキルアップにつながるような機会を提供する必要があります。
人材育成は、長期的に取り組む課題であり、コストや経験などの問題もあるでしょう。
しかし、積極的・継続的にキャリア形成を支援していかなければ、優秀な人材を流出させてしまう懸念があります。
少子高齢化による影響
急速に進む少子高齢化によって、日本の人口に対する高齢者の割合は急速に上昇しています。
単に平均寿命が伸びているだけでなく、健康寿命も伸びており、定年後も働く意欲も体力もある高齢者が増えているのです。
日本も企業に対して、高齢者の就業機会を確保する働きかけや、定年の引上げを求めています。
若い労働力不足を補うためにも、高齢者の労働力をどう扱うかが今後の人材業界の課題となるでしょう。
景気によって需要変動
人材業界は景気の良し悪しによって、大きく需要が変動するというのも課題です。
景気が良い時は企業の求人活動も活発化しますが、景気が悪くなると人を新しく雇う余裕がなく、求人が滞ることもあるでしょう。
新型コロナウイルスの拡大や、記録的な円安によって消費者の消費が落ち込み、業績に影響が出ている企業もあります。
事業縮小により早期退職を促したり求人を減らしたりする企業がある一方で、離職を余儀なくされた求職者は新たな就職先を求めています。
人材の需要と供給のアンマッチに対しても、人材業界は対応していかなければなりません。
人材業界は今後どうなるのか?
収束の見通しがたたない新型コロナウイルスの影響や、世界的な経済不安から経済全体が縮小傾向にあります。
消費者の需要が下げ止まりとなり、新たな人手を必要とする企業が少なくなったのです。
日本のみならず、世界的にみても雇用ニーズが減ったと言えるでしょう。
2021年の半ば頃から少しずつ持ち直してはいるものの、コロナ以前に比べると、有効求人倍率は低い状態が続いています。
企業に労働力を提供する存在である人材業界にとって、この状態をどう切り抜けていくのかが今後の大きな課題となるでしょう。
例えば、コロナ禍で深刻なダメージを受けた企業として挙げられるのが飲食業です。
緊急事態宣言や、蔓延防止等重点措置によって、夜の時間帯の営業に制限がかかり、酒類提供の停止をする期間が長引き、従来通りの営業活動ができなくなりました。
そのため、既に務めている従業員でさえシフトに入れない状況が続き、新たな採用ニーズは減少傾向にあります。
飲食業だけでなく、宿泊業もダメージを受けています。
海外からの旅行者の受け入れが停止され、国内の旅行客も県境をまたぐ移動の自粛が求められる期間が長かったためです。
少しずつ回復傾向ではあるものの、安定的な需要の回復はいまだ見込めず、休業や廃業に追い込まれた宿泊業者も多く存在します。
しかし、全ての業界において雇用のニーズが減少したわけではありません。
例えば、コロナ禍において深刻な人手不足が社会減少となったのが医療機関です。
感染対策を徹底した上で業務を行うと通常よりも業務量が増える上に、濃厚接触者と認定されたスタッフは勤務をすることができません。
そのため、残りのスタッフが過重労働を強いられるケースが増え、結果として大幅離職が起こった医療機関も出ました。
また、運送業界における人材不足も社会的な問題です。
自粛により「おうち需要」が高まったことから、買い物をオンラインで済ませたり、外出することができない人の代わりにオンラインショッピングをする習慣が定着したりと、ネットショッピングの分野での消費が盛んになったのが理由としてあげられます。
結果として、トラックドライバーや、荷物の仕分けをする人などのニーズが高まったのです。
以上のように、人手が足りている業界と、人手が足りていない業界があります。
競争の厳しい人材業界の中で生き残るためには、人員が過剰になっている業界から、人員が足りていない業界にできるだけスムーズに労働力を移動させることが肝となってきます。
人材派遣会社はどうすべき?
人材の流動が激しい派遣業界は、人材業界のなかでも経済情勢など時代の影響をもっとも受けやすい業界と言えるでしょう。
過去にも「派遣切り」などが問題となりました。派遣業界にも、時代に合わせた変化が求められています。
教育制度を充実させる
派遣会社は派遣労働者に対し、キャリアアップやキャリア形成の機会を提供する必要があります。
人手不足の業界に、未経験者の労働者を派遣するには、専門知識などを事前に体形的に身に着けることができるカリキュラムを用意する必要があるでしょう。
教育制度や、キャリア形成できるプログラムを用意することで、質の高い人材の育成や確保をすることができます。
結果として、派遣先企業に質の良い人材の提供ができたり、求職者はキャリア形成ができたりと、双方のニーズを満たす運営が可能になるでしょう。
事業の多角化、拡大化
事業の多角化や、拡大化を検討してみるのが良いでしょう。
例えば、人材派遣だけでなく、人材紹介を行うのもおすすめです。
人材派遣では、派遣社員を自社で雇い、給与の支払いや、業務上のメンタルケア等をする必要がありますが、人材紹介は人材を紹介を企業に紹介するまでが仕事です。
そのため、人材管理や、教育費等のコストを大幅に削減することができ、利益率が高くなる傾向にあります。
また、営業利益率の改善をするために業務の見直しをするのもおすすめです。
例えば、下記のような方法があります。
・派遣スタッフの教育カリキュラムを整備して無駄を省く
・オフィスを都心から地方に移転させて賃料を下げる
人材派遣会社では紹介料のうち、70%が派遣社員の給与にあてられ、残りの大部分を人材の教育や、社会保険料の支払い等にあてるため、ほとんどの場合、営業利益率が一桁台ということも少なくありません。
業務の見直しによって、利益率を改善し、自社の経営を見直してみると良いでしょう。
ITツールを用いたスピーディーな情報共有
ITツールを導入し、情報共有を効率化するのもおすすめです。
人材業界は市場が目まぐるしく変化し、ニーズも時代に合わせて多様化しています。
その課題を解決するために、いかにスピーディーに、関係者に情報提供や状況提供ができるかが鍵となってくるでしょう。
ITツールを用いることで、データを一元管理することができるようになり、社内の関係者がいつでも必要な時に求職者のデータを閲覧することができるようになります。
状況を正確に把握することができるようになるため、タイムリーな対応をすることができるでしょう。
結果として、派遣先企業にはスピーディーに最適な人材を紹介でき、求職者にとっては自分の希望に沿った仕事が見つかりやすくなるというメリットがあります。
クラウド上で管理されているものであれば、いつでもどこでも確認することができるため、テレワーク時や、客先に訪問している時でもスムーズに確認することができ、業務の効率化も期待できるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの影響や、経済不安などの影響を大きく受けた人材業界の課題と、今後の解決策についてご紹介しました。
業績に影響を受けた企業も少なくありませんが、経済的な不安によって労働力が動くからこそ、人材業界にとってチャンスとなる可能性もあります。
このピンチを逆手にとって、人材業界の今後を見据えた対策をとることで、課題を解決でき、業績を大きくさせるヒントを得られるかもしれません。
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