年次有給休暇管理簿とは?記載項目や効率的な作成方法を解説

年次有給休暇が10日以上発生する労働者を雇用する事業者に対して、年次有給休暇管理簿の作成が義務づけられました。

これは2019年4月に実施された働き方改革関連法改正によるものであり、年次有給休暇は守るべき従業員の権利です。

適切に年次有給休暇を付与するためには、年次有給休暇管理簿作成は必須です。

また、年次有給休暇管理簿は作成後3年間の保管も義務づけられています(2024年3月時点)。

 

年次有給休暇管理簿の作成にあたっては、記載するべき内容などの決まりごとも多いものとなっています。

自社で作成しているものの、必須となる項目を正しく記載できているか、記入内容は正しいかといったことが不安だというケースもあるでしょう。

そこで今回は、年次有給休暇管理簿について押さえておくべきポイントを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

年次有給休暇管理簿とは

年次有給休暇管理簿とは、従業員の有給休暇の付与状況や、取得状況を記録するための書類です。

働き方改革関連法改正により義務づけられた「年5日の年次有給休暇の確実な取得」を管理することが作成の目的となっています。

作成するフォーマットなどは特に定められていません。

手書きで作成して直接記入する方法やExcelで管理する方法、勤怠管理システムなどを利用する方法など、自社のスタイルに合わせた方法で作成しましょう。

 

作成が必要な対象者

年次有給休暇管理簿の作成が必要となる対象者の条件を、まずは確認しましょう。

年次有給休暇管理簿の作成が必要となる対象は「労働基準法第39条により有給休暇を与えたとき」と定められています。

具体的な内容は、以下の通りです。

 

年次有給休暇を10日以上付与される労働者

「年次有給休暇が10日以上付与される労働者」と限定されているのには理由があります。

年次有給休暇を10日以上付与される労働者には「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が定められているためです。

ちなみに、10日以上の有給休暇が付与される条件は「雇用されてから6か月以上経過していること」「決められた労働日数の8割以上出勤していること」があげられます。

 

ただし、パートやアルバイトの場合はこの2つの条件と以下3点を満たしている場合は、年10日以上の有給休暇が付与されます。

  • 週所定労働日数が5日以上であること
  • 週所定労働日数が4日、かつ継続勤務年数が3年6か月を経過していること
  • 週所定労働日数が3日、かつ継続勤務年数が5年6か月を経過していること

このポイントを理解したうえで、従業員が年次有給休暇管理簿を作成すべき対象者であるかを確認する必要があります。

 

ちなみに、年に10日以上の有給休暇が付与されていない従業員に対しては、年次有給休暇管理簿の作成義務は発生しません。

ただし「今年は条件を満たさなかったから10日付与されていないけれど、翌年以降はまた10日以上の有給休暇付与の可能性が高い」といった場合は、年次有給休暇管理簿を作成しておいた方が管理がスムーズです。

 

年次有給休暇管理簿に記載する項目

年次有給休暇管理簿に特別なフォーマットは定められていません。

そのため書式は自由となりますが、年次有給休暇管理簿に必ず記入しなくてはいけない項目が以下のように3点定められています。

  • 基準日
  • 日数
  • 時季

ひとつずつ、詳しく解説します。

 

基準日

年次有給休暇管理簿には「基準日」を記載する必要があります。

基準日とは、従業員に対して年次有給休暇を付与した日付で、それ以降は1年ごとに同じ基準日に有給休暇が付与されます。

基準日の項目には、一斉付与を実施している場合は一斉付与日を、雇用開始日によって年次有給休暇を付与している場合は付与した日付を記入しましょう。

従業員が有給休暇を取得した日と間違えるケースもあるようですが、そうではなく付与された日ですので、間違えないようにしましょう。

 

日数

年次有給休暇管理簿に記載する項目として、年次有給休暇の日数も必須です。

有給休暇の付与日数と未取得の有給休暇の日数を記載します。

 

有給休暇の付与日数

有給休暇の付与日数には、従業員が取得できる有給休暇の日数を記載します。

前年度繰越分と、本年度付与分両方を記入します。

 

未取得の有給休暇の日数

未取得の有給休暇の日数は、上記の有給休暇の付与日数合計分から、従業員が取得済みの有給休暇の日数を引いた日数を記載します。

 

時季

年次有給休暇管理簿には「時季」も記入します。

時季は従業員が実際に年次有給休暇を取得した日を意味します。

午前半休や午後半休といった詳細も正確に記載しておきましょう。

 

年次有給休暇管理簿の主な作り方

年次有給休暇管理簿を作成する方法は「手書き」「Excel」「勤怠管理システムの活用」の3つの方法が一般的です。

それぞれの方法で年次有給休暇管理簿を作成するメリットとデメリットを理解し、自社の運営体制に合わせた方法を選ぶようにしましょう。

 

手書きで作成する

年次有給休暇管理簿を手書きで作成するメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

 

メリット

手書きで年次有給休暇管理簿を作成する方法は、誰にでも手軽に作成できるシンプルな方法といえます。

勤怠管理システムなどに慣れていない場合は紙で作成しておけばすぐに記入が可能です。

記入したものをファイリングしておけば問題ありません。

また、初期費用なども不要で、すでにあるものを活用して作成できる点もメリットといえるでしょう。

 

デメリット

手書きで年次有給休暇管理簿を作成するデメリットとしては、手書きだと作成に時間がかかる点があげられます。

日数などの計算も人が行うため、手間や記入ミスのリスクもあるでしょう。

また、次年度には新しいものを最初から書き直す必要がありますから、やはり手間がかかります。

保管に関しても紛失や破損のリスク、また保管スペースの確保といった問題もあることを理解しておきましょう。

 

Excelで作成する

多くの企業で利用されているExcelで年次有給休暇管理簿を作成する方法は、現在広く使われている手法といえます。
年次有給休暇管理簿をExcelで作成するメリットとデメリットは、以下の通りです。

 

メリット

Excelでの作成はパソコンさえあれば比較的簡単に可能です。

日数などの計算も自動化できるため、ミスを防ぐことにもつながります。

正確に記録を残せる点は大きなメリットといえるでしょう。

Sheetを複製する機能を利用すれば、年度更新も簡単に行うことができます。

 

デメリット

Excelは手軽に誰にでも操作できるため、データ改ざんなどのリスクが存在します。

リスクとして理解し、パスワードをかけるなどの対策が必要であると考えておきましょう。

また、比較的よくあるミスとして「保存をし忘れてしまった!」というものがあります。

入力後の保存ミスの可能性もあることを、あらかじめ理解しておきましょう。

 

人材管理・勤怠管理システムで作成する

年次有給休暇管理簿を、人材管理・勤怠管理システムを利用して作成する方法もあります。

多くの人材管理・勤怠管理システムには、従業員が入力した勤怠データをベースに、簡単に年次有給休暇管理簿を作成する機能が付いています。

この機能を活用することで、年次有給休暇管理簿の作成は格段に容易となります。

具体的に、年次有給休暇管理簿を利用した場合のメリットとデメリットをみていきましょう。

 

メリット

人材管理・勤怠管理システムに年次有給休暇管理簿を生成する機能が付いていれば、自動的に、またはボタンひとつをクリックするといった簡単な操作で年次有給休暇管理簿を作成することができます。

 

デメリット

人材管理・勤怠管理システムを導入するためには、初期費用や月額利用料などの費用が必要となります。

 

年次有給休暇管理簿の作成方法を選ぶ際は、それぞれの作成方法によるメリットとデメリットを理解し、自社にはどの運用方法が適しているかを見極め、選ぶようにしましょう。

 

年次有給休暇管理簿を運用するポイント

年次有給休暇管理簿の管理や運用は、そのために必要となる時間数や工数を考えると、負担が大きくなることは避けられないでしょう。

しかし、年次有給休暇管理簿を作成することは、最終的には自社の有給休暇管理を効率化することにもつながりますから、いかに効率よく運用するかが重要となります。

ここでは、年次有給休暇管理簿を効率よく運用するポイントについてご紹介します。

 

基準日を統一する

中途採用など、入社日が人によって異なるケースが増えていくと、基準日も変わりますからその管理はますます複雑になります。

こうした場合に助けとなるのが、年次有給休暇付与基準日を統一する方法です。

このような取り扱いを「年次有給休暇の付与基準日の斉一的取り扱い」と呼びます。

自社の制度としてこの取り扱いを導入するためには、以下2点の対応が必要です。

  1. 就業規則への明記
  2. 労働基準監督署への届け出

労働基準監督署に届け出をする場合は「労働者代表からの意見書受け入れ」と「全労働者への周知」が必要です。

 

システムで有給休暇の申請・管理を効率化

人材管理・勤怠管理システムは、多くの場合、従業員が入力した勤怠データをもとにリアルタイムで年次有給休暇管理簿を作成できる機能が搭載されています。

従業員に対する年次有給休暇の付与や、従業員ごとの有給休暇残日数や基準日などを簡単に確認できるので、年次有給休暇管理簿作成以外の業務効率化も期待できるでしょう。

この機能を活用すれば年次有給休暇管理簿作成を効率的に、かつ人為的ミスを軽減しながら実施することが可能です。

手書きでの管理やExcelを用いた管理と比べると、初期費用や月額費用などコスト面では負担があります。

しかし、長い目で見たときにそれに勝るメリットがありますから、ぜひ検討してみてください。

 

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年次有給休暇管理簿の規定や罰則について

年次有給休暇管理簿を作成するうえで、その規定や罰則について理解し、遵守することは大変重要です。

ここでは、年次有給休暇管理簿を保管すべき期間と、作成・保存を行わなかった場合の罰則規定について確認しておきましょう。

 

保管すべき期間

労働基準法施行規則24条7第1項によると、年次有給休暇管理簿の保管期間は5年と定められていますが、2024年3月時点では経過措置により3年が適用されています。

こちらに関しては、今後は5年に延長することが予測されますので、最新の情報を確認するようにしてください。

 

“第二十四条の七 使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二及び第五十六条第三項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない。

引用:昭和二十二年厚生省令第二十三号労働基準法施行規則|e-Gov法令検索”

 

紙で保管していると、5年分の全社員の年次有給休暇管理簿を保管するにはそれなりにスペースを確保する必要があります。

Excelで管理する場合も、データ量が多くなることで管理が複雑になることが予想できるしょう。

 

人材管理・勤怠管理システムを導入している場合は、ワンクリックで年次有給休暇管理簿を作成することが可能ですし、保管スペースなどの心配も必要ありません。

また、データ改ざんや紛失、破損などのリスクを考えたときにも、人材管理・勤怠管理システムの活用は大変有効といえるでしょう。

 

作成・保存しなかった場合の罰則

年次有給休暇管理簿を作成しなかった、または保管しなかった場合には、どのような罰則が科せられるのでしょうか。

結論から言いますと、年次有給休暇管理簿を作成しなかった、保管していないなどの場合でも、罰則はありません。

就業規則とは異なり、届け出が必須となってはいないためです。

 

ただし、10日の有給休暇が付与されているにも関わらず、従業員が最低5日の有給休暇を取得していない場合は、罰則として30万円以下の罰金が科されることもありますので、注意しましょう。

 

年次有給休暇管理簿作成は自社を助ける結果につながる!効率よく作成・運用することが鍵

年次有給休暇管理簿の作成は、手間もかかりますし、場合によってはコストも発生します。しかし、作成しておくことで、自社の年次有給休暇管理の負担を軽減できることを理解しておきましょう。

また、会社の状況に合わせた年次有給休暇管理簿の作成方法を検討することも重要なポイントです。

IT化が進んでいる企業では人材管理・勤怠管理システムを導入することで作成時間の短縮となりますし、IT化があまり進んでおらず、Excelやシステムの使い方がよく分からない従業員が多い職場では、手書きの方がスムーズである可能性もあります。Excelの操作なら全社員対応できそう、という場合はExcelでの作成もひとつの方法です。

自社の状況と従業員の意見を聞きながら、どのようなスタイルをとるかを検討していきましょう。

 

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