派遣社員のタイムカードの書き方や保管義務について

人材業の課題解決

タイムカードは、派遣社員の正しい勤務状況を把握するための重要なツールです。

働き方改革が叫ばれる今、正確な勤怠管理を行うことは、コンプライアンスを重視しているとして評価され、優良企業として対外的な位置づけも高くなるでしょう。

労働基準監督署も、派遣社員の勤怠管理には厳しい目を向けており、違反した企業は勧告を受けます。

勧告を無視して正しい勤怠管理を行わずにいると、ブラック企業として認知されてしまい、社会的信用をおとすことにもなりかねません。

管理の所在が曖昧になりがちな派遣社員のタイムカードの書き方や保管義務について解説します。

派遣社員のタイムカードについて

様々な働き方をする人が増えている現代では、正規雇用を選択しない人も増加しており、それに伴い、派遣社員の需要も高まっています。

企業としても、繁忙期の人手不足や、高度なスキルを持つ人材を、必要な時期に短期雇用することで、コストの削減や業務の効率化につなげられるでしょう。

派遣活用において気をつけなければならないことは、派遣社員を採用する場合、派遣先社員との賃金水準、職務の内容、評価が均等になるよう配慮することが労働者派遣法で求められていることです。

派遣元企業と派遣先企業は、派遣社員の労働状況を把握する手段として、タイムカードから正確な情報が入手できるよう体制を整えなければなりません

タイムカードの記入を、正確に行うためには、改ざんのしやすい手書きのものより、デジタル打刻や、ICカードでの入退室履歴打刻、タブレット、スマホ、PCを使用して打刻するデジタル勤怠管理システムを選ぶ企業が増えています

特に賃金の支払いを行う派遣会社は、派遣先で、派遣社員が実際に勤務している様子を確認することが難しいため、タイムカードの正確な情報管理が求められるでしょう。

承認までの流れ

派遣社員が派遣元企業から賃金を受け取る場合、派遣先の企業から承認を受けなければなりません。

賃金計算を行う際に必ず必要になる、承認の流れを説明しましょう。

 

・派遣される社員のタイムカードは、派遣先企業に設置されており、勤務開始と勤務後に打刻して、勤務時間を明記しておきます。

・賃金の支払い期限を目安に派遣元企業がタイムカードを集め、集計します。

・集計が行われたタイムカードの内容が正しいものであるか、派遣先企業が確認後「承認」をします。

・派遣元、派遣先企業双方が合意して、派遣社員に賃金が支払われます。

 

デジタル勤怠管理システムを導入している企業では、記録のついたタイムカード情報をPCからメールで送付することで、情報共有も素早く行え「承認」までの時間が短縮され、業務の効率化につながるのです。

管理台帳の記載事項にあたる

派遣社員を起用したい派遣先企業と、派遣元企業は、派遣社員1人ごとにその人の条件に合わせて「管理台帳(派遣先管理台帳)」を作成します。

管理台帳とは、派遣社員の就業状況を正確に把握し、派遣元企業、派遣先企業双方の雇用管理に必要な情報をまとめた資料です。

管理台帳に正確な情報を記入して、勤怠管理を行うために、タイムカードは重要な情報源となります。

管理台帳の主な掲載事項は、以下の通りです。

 

・派遣社員の氏名

・派遣就業開始日

・派遣就業日の始業、終業、休憩時間

・業務内容

・派遣先事業所の名称

職務内容の他に、派遣先企業が派遣社員から苦情の申し立てを受けた際には、以下の内容も都度記載し、派遣元会社に通知する必要があります。

 

・苦情の申し立てを受理した日

・苦情の内容

・苦情処理状況と対応

派遣社員の職務内容等を記載した「管理台帳(派遣先管理台帳)」の内容を正確なものにするためには、タイムカードも正確に記入しなければなりません。

派遣社員のタイムカードの書き方

派遣社員、派遣元企業、派遣先企業にとっても正確なタイムカードは、重要な情報です。

正確な派遣社員のタイムカードの書き方を見ていきましょう。

基本的な記載事項

通常業務を行う場合、タイムカードに記載するのは、始業時間、終業時間、休憩時間の3点です。

ただし、残業があった場合、派遣社員でも残業代が発生することがあることを憶えておきましょう。

派遣元企業の労働条件通知書に残業に関する条件が明記されている場合がありますが、その条件を満たさない残業命令を派遣社員に実行させることはできないため、派遣社員1人ひとりの条件をしっかりと確認しておく必要があります。

また、派遣社員と派遣元企業が、36協定(※1)の締結をしていない場合は、時間外労働を行うことはできません。

範囲を超えて時間外労働を行った場合、派遣先企業が労働基準法違反となってしまいますので注意が必要です。

一般的には、繁忙期や突発的な業務の増加があり、時間外労働を行わなければ企業活動が滞る場合に備え、「特別条項付き36協定」が設けられています。

特別条項付き36協定は、派遣元企業と派遣先企業が、締結の対象となる時間や業務を明確にしながら検討しなければなりません。

条件を満たした派遣社員が残業を行った場合、派遣元企業から残業代が支払われます。

正規雇用社員と同様に、派遣社員の時間外労働も割増賃金(※2)となり、企業によっては、時間外労働は、タイムカードへの記載のほか、別紙に記入する場合もあるので確認しておきましょう。

(※1)36協定とは、「サブロクキョウテイ」と呼ばれ、労働基準法第36条の内容を指します。正式には「時間外・休日労働に関する協定届」で、基本的に労働者の勤務時間は1日8時間、週40時間以内が「法定労働時間」として定められており、法定労働時間を超えた勤務は、法律違反にあたります。

 

(※2)【割増賃金の割増率】

・時間外労働:25%

・深夜労働(22時~翌5時):25%

※時間外で深夜の場合は、両方の割増が適用されて50%になる

また、派遣社員が欠勤を希望する場合は、派遣元企業と派遣先企業の両方に連絡をするよう決められていることが多く、連絡をする順番なども契約社員とすり合わせておく必要があるでしょう。

有給休暇は、半年以上継続して勤務しており、全労働日の8割以上出勤するという条件を満たせば、10日間与えるよう定められています。

勤続年数によっては、最大20日まで引き上げられます。

有給休暇の取得に関しても派遣元企業と派遣先企業の両方に申請を行い、タイムカードにもその旨を記載する必要があるため、有給休暇の申請方法や、記載の仕方などは、事前に決めておきましょう。

書き方の注意点

タイムカードの書き方で注意しなければならないのは、打刻ミスがあった場合です。

打刻ミスが疑われる場合は、本人に確認を取ったうえで現状を把握し、派遣先企業で修正しなければ給与計算でのミスにも繋がりかねません。

営業職など、事業所以外での勤務を行う派遣社員は「自己申告による勤怠管理」が認められている場合もありますが、自己申告による打刻ミスが生じるケースもあるでしょう。

また、自己申告での管理方法では、派遣社員が実際の労働時間より多く申請していたり、逆には現場の上司命令により少なく申請させられていたりする可能性もあるので、情報改ざんが出来ないよう対策をとらなければなりません。

派遣先企業が労働時間の状況を直接確認する手だてがない場合は、派遣社員の自己申告での勤怠管理とならざるえませんが、出先でもPCやスマートフォンなど社内の勤怠管理システムにアクセス出来る環境を整えておくことで、打刻ミスを防ぐことができ、ミスがおきた場合でも速やかに修正できます。

再発防止の観点から、打刻ミスには、始末書を提出してもらう制度の導入をおすすめします。

始末書は、派遣社員への再確認と、労働基準監督署へのエビデンスにもなるでしょう。

派遣社員のタイムカードの保管義務

派遣社員のタイムカードは、保管が義務付けられています。

タイムカードを破棄せず保管することは、派遣社員や派遣先企業だけでなく派遣元企業にもメリットがあります。

労働時間について、派遣社員との認識の齟齬や、理解のすれ違いがあった場合、勤務時間を客観的に証明できるタイムカードは、明確な証拠になり、未払い賃金の請求や残業代を求められた場合にも、法律に則った対応が可能になるでしょう。

お互いの主張が異なる場合にも、正確に記入されたタイムカードは強い味方になります。

従業員とのトラブル以外にも、自社が労働基準監督署の調査対象に選ばれた場合、提出を求められる書類の1つがタイムカードです。

労働基準監督署は、労働時間の管理や労働条件の確認、安全衛生など、労働者の権利が守られているかを監督する機関です。

労働関係法令を守っていることを示す証拠となるタイムカードは、しっかりと保管しておきましょう。

正しい保管方法で管理しましょう

派遣社員の雇用主は派遣元企業ですが、日々の勤怠管理は派遣先企業の責務です。

「派遣社員については派遣元企業が勤怠管理をしているから、派遣先企業では勤務の実態や給与支払いは確認しなくてよい」など、ずさんな管理にならないよう、派遣先企業でも正しい管理方法を確認しておきましょう。

保管時の注意点

労働基準法第109条では、タイムカードの保管期間を、過去5年分と明記されています。

これは雇用形態に関係なく、正社員も派遣社員も同じ5年分のタイムカードを保管しなければなりません。

従業員が残業代等の未払いを企業へ請求する場合に、さかのぼって請求できるのが「原則5年」とされており、そのためタイムカードの保管期間も5年となっています。

ただし、2020年の4月に改正民法で施行された法律のため、以下のように定められてます。

 

・2020年3月31日までは、3年間(5年の保存が望ましいとされている)

・2021年4月1日以降は、5年間

そのほかに、従業員に支払う賃金の支払内容を記載した賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねたタイムカードの場合は、保管期間が7年間です。

また、タイムカードの保管期間は、完結日から数えて起算するため、最後にタイムカードに記録を残した日からカウントします。

派遣社員の場合、派遣契約が解消した日が起算日になるので、気をつけましょう。

管理を効率化するには?

派遣社員の契約内容は1人ひとり異なるため、タイムカード管理の作業も煩雑になり、勤怠管理担当者の方にとって、大きく時間を割かれる業務です。

紙ベースの勤怠管理の場合、事業所が複数ある企業では、それぞれの事業所で勤怠データをPCで入力し、人事部や労務部にメールなどで送る必要があります。

担当部署の責任者がチェックし、不明瞭な部分は入力担当者に確認をとるなど、多くの作業工程を踏まなければなりません。

また、紙ベースのタイムカードは、保管場所の確保や紛失のリスクもついて回り、働き方改革により事務作業の効率を見直している企業にとっては、改革を促したい業務の1つでしょう。

そこで派遣社員の勤怠管理業務におすすめのソフトが、STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)の勤怠管理機能です。

「STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)」には以下のような機能があり、勤怠管理に関するサービスが充実しています。

 

・勤怠外部ファイル取込

・勤怠入力

・勤怠実績集計表

・勤怠実績一覧表

・勤怠管理表

・勤怠処理状況一覧表

・出勤区分集計表

・勤怠時間集計表

・出欠一覧表

・勤怠データ出力

 

「STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)」は、勤怠管理だけでなく人材ビジネスの全行程をデジタル化できるよう開発されており、プラン次第ではすべてを一元管理しながら、DX化を目指す企業のコンサルティングも行います。

もともと人材派遣会社向けに開発されたソフトですが、人材ビジネス全般に必要なあらゆる機能を実装していながら、わかりやすさを追求した入力画面は、初心者の方でも活用しやすく、多くの企業で導入されています。

まとめ

派遣社員のタイムカード管理は煩雑であるものの、法律に則った正確なデータを蓄積しておくことで、クリーンな事業内容を証明できます。

紙のタイムカードで管理をしている企業も未だに多いようですが、ペーパーベースでの勤怠管理は、入力作業も多くミスにも繋がりやすいため、デジタル化に向けて動き出す企業が増えています移行期は多少の時間と手間がかかりますが、結果的にコストの削減や業務の効率化が叶えられるでしょう。

派遣社員の勤怠管理にお悩みの際は、タイムカードのデジタル化を検討してみてはいかがでしょうか。