派遣先管理台帳の記載事項、保管、通知方法について徹底解説

人手不足や新規プロジェクトの立ち上げなど、新しい人材を雇用したいと考えるシーンは多いでしょう。

しかし、正規雇用をするには時間が足りない場合や、コストの面で難しい場合もあると思います。

また長期的な雇用で無い場合や、必要なスキルを備えている人材を確保したい場合は人材派遣社員の受け入れがオススメです。

初めて人材派遣会社を利用するという場合は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び労働派遣者の就業条件の整備等に関する法律」(通称:派遣法)について理解をしておきましょう。

派遣社員を雇用するためには、人材派遣会社と多くの書類のやりとりが発生します。

「労働者派遣個別契約書」、紹介予定派遣の場合は「紹介予定派遣個別契約書」といった書面から「労働者派遣通知書」「派遣元管理台帳」「雇用契約書(兼)就業条件明示書」「抵触日通知書」「求人票」「発行状況一覧表」そして「派遣先管理台帳」です。

「派遣先管理台帳」は派遣社員を採用した場合、必ず必要となる書類で作成、記載、保管、記載内容の通知が派遣法第42条によってさだめられています。

仮に上記のことを行わなかった場合、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので気をつけてください。

こちらの記事では「派遣先管理台帳」の記載内容と記載例、保管方法と通知方法について説明していきます。

派遣先管理台帳とは

「派遣先管理台帳」とは、派遣社員の労働日や労働時間といった就労実態を記載する書面のことです。

派遣社員を受け入れ就労させている企業では、「派遣先管理台帳」を作成して保管する必要があり、その記載内容の一部を人材派遣会社に通知する義務があります。

人材派遣会社と派遣社員を受け入れ就労させている企業の間には「労働者派遣基本契約書」「労働者派遣個別契約書」など複数の書類が発生しますが、「派遣先管理台帳」もそのうちの一つです。

「派遣先管理台帳」は派遣社員ごとに必要で、それがあることで派遣社員を受け入れ就労させている企業は派遣社員の勤務日、労働時間などの就業実態を正確に知ることができます。

また、「派遣先管理台帳」に記載した内容の一部は、人材派遣会社に通知する必要のある重要な書類で、雇用管理の資料です。

派遣社員は、雇用されている人材派遣会社ではなく、実際に勤務している派遣社員を受け入れ就労させている企業からの指揮により業務を行います。

そのため、雇用主である人材派遣会社は派遣社員の就業状況を適正に知る必要があるため、派遣社員を受け入れ就労させている企業は「派遣先管理台帳」を作成して勤務状況を報告する義務があるのです。

なお、派遣社員を受け入れ就労させている企業の事業所の人数が、スタッフを含めて5名以下の場合は「派遣先管理台帳」を用意する必要はありません。

例えば社員が3名の事業所に、新しく派遣社員が1名増えた場合は不要ですが、「派遣先管理台帳」の作成、通知義務がなくとも、勤務状況の把握はすぐにできるように整理、管理しておくと良いでしょう。

派遣先管理台帳の記載内容と記載例

「派遣先管理台帳」には多くの記載項目があります。

ここでは、その記載内容と記載例についてご紹介していきましょう。

なお、2020年4月に派遣法の改正があり、「派遣先管理台帳」に記載する内容の一部が変更になっています。

インターネットで検索をした場合、過去の情報が出てくることがあるのでご注意ください。

記載内容

「派遣先管理台帳」には以下の項目について記載の義務があります。

 

1.派遣社員の氏名
2.人材派遣会社の名称、または事業主の氏名
3.人材派遣会社の事業所名
4.人材派遣会社の事業所の所在地
5.派遣契約が無期雇用または有期雇用のどちらであるか
6.派遣社員が60歳以上であるか
7.協定対象派遣労働者か否か別か
8.就業日
9.就業時間帯、休憩時間
10.業務種類、内容
11.派遣社員が行う業務に伴う責任の程度
12.派遣社員を受け入れ就労させている企業の事業所名、事業所の所在地、就業場所、部署13.派遣社員からの苦情の処理について
14.教育訓練の実施日時、内容
15.派遣社員を受け入れ就労させている企業の責任者、人材派遣会社の責任者について
16.社会保険、労働保険の有無
17.紹介予定派遣について
18.期間制限の対象外の業務の場合、その業務内容

 

このように「派遣先管理台帳」の記載内容は就業日、就業場所、就業時間、派遣先、派遣社員を受け入れ就労させている企業の責任者、人材派遣会社の責任者などがあります。

「派遣先管理台帳」の記載内容は、派遣法に則って行う義務があるので、派遣法が改正されるタイミングに気をつけましょう。

記載例

次は「派遣先管理台帳」の記載内容に沿って、記載例をご紹介します。

ぜひ参考にしてください。

1.派遣社員の氏名
実際に派遣して労働するスタッフの氏名を書きましょう。

2.人材派遣会社の名称、または事業主の氏名
人材派遣会社の事業主が法人の場合は法人名を書きます。個人事業主の場合は個人の氏名を書きましょう。

3.人材派遣会社の事業所名
派遣契約における許可を受けている人材派遣会社の事業主の事業所の名称を書きます。

4.人材派遣会社の事業所の所在地
派遣契約における許可を受けている人材派遣会社の事業所の所在地を書きましょう。電話番号も必要です。

5.派遣契約が無期雇用または有期雇用のどちらであるか
派遣契約における派遣社員の契約が、無期雇用であれば「無期雇用派遣労働者」と書きます。有期雇用であれば「有期雇用派遣労働者」と書きましょう。

6.派遣社員が60歳以上であるか
派遣社員が60歳以上か、または60歳未満かを書きます。

7.協定対象派遣労働者か否か別か
派遣社員が「協定対象派遣労働」かどうかの確認をしましょう。

「協定対象派遣労働」は2020年4月の派遣法改正により、正社員と派遣社員の不合理な格差を廃止するための「同一労働同一賃金」を実現するためにできました。「協定対象派遣労働」とは「労使協定方式」により賃金が決定される派遣社員のことをいいます。

「労使協定方式」とは、「労使協定」を締結した派遣社員が同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準以上の賃金にさだめる労使協定を寺院剤派遣会社と締結したうえで賃金が決まることです。

「協定対象派遣労働」でない場合は「派遣先均等・均衡方式」の選択をしているということになります。これは派遣社員を受け入れ就労させている企業の正社員と派遣社員の待遇格差が起きないように賃金が決まることです。

8.就業日
派遣社員が実際に稼働をした日の実績を書きます。
例えば「派遣先管理台帳」ではなく、タイムシートがある際はそれを別紙として、その旨を書き添付しましょう。

9.就業時間帯、休憩時間
実際に派遣社員が稼働をした開始時間と終業時間、休憩時間を書きます。
こちらもタイムシートがある際はそれを別紙として、その旨を書き添付しましょう。

10.業務種類、内容
「労働者派遣個別契約書」に記載されている、派遣スタッフが行う業務の内容を書きます。

11.派遣社員が行う業務に伴う責任の程度
具体的な業務範囲や役職がある場合は役職、部下の人数などを書きます。緊急時に求められる権限についても書きましょう。権限がない場合も書きます。

12.派遣社員を受け入れ就労させている企業の事業所名、事業所の所在地、就業場所、部署
雇用保険の適用事業所名を書きましょう。

13.派遣社員からの苦情の処理について
派遣社員から苦情があった場合にのみ書きます。

「派遣先管理台帳」に記載に必要な内容は、以下の3項目です。
 ①苦情の申し出を受けた年月日
 ②苦情の内容
 ③苦情の処理状況

14.教育訓練の実施日時、内容
派遣社員を受け入れ就労させている企業が派遣社員に対して教育訓練を行った場合は、下記の内容を書きましょう。

「派遣先管理台帳」に記載に必要な内容は、以下の3項目です。
 ①教育訓練を行った日
 ②教育訓練の時間数
 ③教育訓練の内容

15.派遣社員を受け入れ就労させている企業の責任者、人材派遣会社の責任者について
派遣社員を受け入れ就労させている企業の責任者および人材派遣会社の責任者の役職、氏名、連絡先を書きましょう。

16.社会保険、労働保険の有無(無い場合はその理由)
各種保険の被保険者資格取得届の提出の有無について書きます。提出していない場合や各種保険の資格が無い場合は、その理由を具体的に書きましょう。

17.紹介予定派遣について
派遣契約が紹介予定派遣の場合のみ書きます。

「派遣先管理台帳」に記載に必要な内容は以下の5項目です。
 ①紹介予定派遣であること
 ②派遣社員を特定することを目的とする行為を行った場合には、その行為の内容
 ③複数の派遣社員の中から特定行為を行った際には、特定した基準
 ④採否結果
 ⑤職業紹介の受託を希望しなかった場合、または職業紹介を受託した派遣社員を雇用しなかった時は、その理由

18.期間制限の対象外の業務の場合、その業務内容
派遣契約が「派遣受入期間の制限を受けない業務」の場合、「労働者派遣個別契約書」の内容を書きましょう。

事前に記載する項目数が多いだけではなく、派遣社員の勤務状況は日々記載の必要があります。

人材派遣会社に通知が必要な内容の記載漏れによるトラブルが起きないよう、「派遣先管理台帳」の正しい書き方を知ったうえで管理するようにしましょう。

派遣先管理台帳の保管方法

「派遣先管理台帳」は派遣終了日から起算して、3年間の保管義務があります。

契約更新を行っていた場合は、更新後の派遣期間終了日が起算日です。

紙ベースでの保管、またはデータベースで保管しましょう。

データの保管は、データが消失しないようにハードディスクやUSBメモリなどに書き出すか、クラウド管理がオススメです。

紙の場合も紛失の恐れがあるので、スキャンしてデータ化しておくと安心でしょう。

また「派遣先管理台帳」には稼働日、業務開始時間、終了時間、休憩時間を記載する必要がありますが、それがタイムシートのような別紙の際は、その別紙と一緒に保管します。

「派遣先管理台帳」を保管する理由は、派遣終了後に問題が発生した場合に、就業時の状況を確認できるようにするためです。

派遣先管理台帳の通知方法

派遣先は派遣法第42条第3項、派遣法施行規則第38条によって、「派遣先管理台帳」に記載した事項の一部を人材派遣会社に通知する必要があります。

一ヶ月に一回以上の期間をさだめ、派遣労働者ごとに通知事項に関わる項目を派遣社員を受け入れ就労させている企業から人材派遣会社へ通知が必要です。

「派遣先管理台帳」の一部を人材派遣会社に通知することで、雇用管理に必要な資料として人材派遣会社が保管します。

通知が必要な内容は、下記の内容です。


・派遣社員の氏名
・業務種類、内容
・就業時間帯、休憩時間
・派遣社員を受け入れ就労させている企業の事業所名、事業所の所在地、就業場所、部署

 

就業時間帯、休憩時間についてはタイムシートの送付で可能な場合もあります。

またこれ以外にも、派遣社員を受け入れ就労させている企業が派遣労働者から苦情の申し出を受けた際は、苦情の申し出を受けた年月日、苦情の内容及び苦情の処理状況の対応をその都度記載し、人材派遣会社へ通知が必要です。

通知方法は下記のいずれかで行うようにさだめられています。


・書面での交付
・書面のデータをメールに添付し送信
・FAXで送信

 

また、人材派遣会社から「派遣先管理台帳」の請求があった場合、派遣社員ごとに通知事項に関わる項目を同じく上記のいずれかによって通知するよう決められています。

まとめ

派遣社員の勤務状況を人材派遣会社に通知するために「派遣先管理台帳」が重要な書類であるということは、ご理解いただけたと思います。

「派遣先管理台帳」は、派遣社員の受け入れ一人ひとりに対し作成義務のある台帳です。

「派遣先管理台帳」の作成・保管は派遣社員を受け入れ就労させている企業に義務付けられていますが、派遣法について詳しくない場合は、間違えや漏れが生じがちです。

解決策の一つとして、人材派遣会社に確認を行いながら「派遣先管理台帳」の作成を行う必要があります。

しかしそのような時間が取れない場合や、派遣会社でそういった対応を行ってくれない場合もあるでしょう。

お困りの場合は「スタッフエクスプレス」で解決できます。

「スタッフエクスプレス」は人材ビジネス(人材派遣、人材紹介、業務請負)のオールインワンシステムで各種契約書のフォーマットを提供しているシステムです。

「派遣先管理台帳」のフォーマットもダウンロードできます。

フォーマットはエクセルで提供されているので、レイアウトをオリジナルに変更することも可能です。

システムを導入することで、派遣社員の受け入れで生じる全ての手間を効率化することができます。

「派遣先管理台帳」の書き方は派遣法に則らなければいけないので、間違えのないように記載、管理、保管できるやり方を選びましょう。