派遣元管理台帳とは 派遣先管理台帳との違いや記載内容、保管方法などを解説

2023年3月16日

派遣業界にいる方や人材派遣を利用している方であれば、「派遣元管理台帳」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。

派遣元管理台帳は、派遣社員の雇用環境を守り、労働環境の適切な管理と確認を行うための重要な資料です。

2020年及び2021年の労働者派遣法の改正で、派遣元管理台帳に記録しなければならない項目が変更され、派遣会社にはそれに応じた対応が義務付けられました。

今回は派遣元管理台帳について、派遣先管理台帳との違いや記載内容、保管方法など、法改正を踏まえて今一度押さえておきたいポイントを解説します。

 

派遣元管理台帳とは

派遣元管理台帳は、派遣社員の雇用環境を守り、労働環境の適切な管理と確認を行うことを目的としたもので、労働者派遣法37条で「作成と3年間の保存」が義務付けられています。

この義務に違反して派遣元管理台帳を作成しなかった場合や紛失した場合には、罰則が設けられています。

労働者派遣業は、派遣社員が派遣元に雇用されながら、派遣先からの指示を受けて労働に従事するという特殊な形態で行われます。

そのため、派遣会社は派遣社員の保護と雇用の安定を図る必要があり、様々な措置を講じなければならないと法律によって定められているのです。

派遣元事業主と派遣先がやりとりを行う書類には、労働者派遣基本契約書や労働者派遣個別契約書などがあり、派遣元管理台帳もその一つです。

派遣元管理台帳の記載内容は、派遣社員の氏名や派遣先の事業所名や所在地のほか、雇用の形態、勤務時間、業務内容など多岐に渡ります。

派遣元事業主は、派遣元管理台帳を作成し、派遣労働者ごとに下記の事項を記載しなければなりません。

 

・派遣社員の氏名
・派遣先の名称(事業主の氏名)
・派遣先の事業所の名称
・派遣先の事業所の所在地
・無期雇用か有期雇用かの別(有期雇用派遣労働者の場合は労働契約の期間)
・労働者派遣の期間及び就業日
・始業及び終業の時刻
・業務内容
・派遣労働者から申出を受けた苦情の処理について
・キャリアコンサルティングの実施日時及び内容
・派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
・60歳以上の者であるか否かの別
・時間外・休日労働について
・社会・労働保険の有無(無い場合はその理由)
・紹介予定派遣に係る派遣労働者については、紹介予定派遣に関する事項
・労働者派遣契約に、派遣先が時間外労働・休日労働をさせることがきる旨の定めをした場合には、時間外労働・休日労働させることができる日または時間数
・期間制限の対象外の業務の場合、その業務内容

 

派遣法改正での追記内容

2020年及び2021年に労働者派遣法の改正が行われ、派遣元管理台帳の記載事項についても変更がありました。

労働者派遣法改正を踏まえた派遣元管理台帳作成について、追記しなければならなくなった内容をいくつか見ていきましょう。

 

協定対象派遣スタッフであるか否かの別

労働者派遣法改正により、派遣元管理台帳の作成の際に「協定対象派遣スタッフであるか否かの別」を追記しなければならなくなりました。

協定対象派遣社員とは、派遣元と労使協定を結び、労使協定方式で賃金その他の待遇が決定される派遣社員のことを言います。

「労使協定方式」は、派遣会社と派遣社員が労使協定を締結し、同一労働同一賃金に対応する方式です。

「同一労働同一賃金」とは、2018年6月に成立した「働き方改革関連法案」の重要項目のひとつで、「同一の労働に対しては同一の賃金を支払うべき」という考えに基づき、正規社員と非正規労働者の賃金格差を禁止することを目的としています。

非正規労働者のうち派遣社員の同一労働同一賃金については、派遣先企業の正社員と派遣社員との間の待遇格差を解消することを目的として2020年の改正法で規定されました。

この法改正により、派遣会社は「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」のいずれかを選択し、派遣社員の賃金を決定することが義務付けられています。

「労使協定方式」では、必ずしも派遣社員の賃金を派遣先企業の正社員の賃金水準に合わせる必要はなく、派遣スタッフにとっては派遣先企業が変わっても賃金が下がらないなどのメリットがあるでしょう。

一方、「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先企業の正社員の待遇と均等・均衡を図り、同一労働同一賃金に対応する方式のことを指し、派遣先企業の正社員と派遣社員との間に格差が生じないよう賃金を決めることとしています。

派遣社員にとっては、同じ仕事内容でも賃金が下がるリスクがあり、また派遣先企業にとっても比較対象労働者の選定や待遇に関する情報提供など負担が増えるため、「労使協定方式」を選択する派遣会社が多くなっています。

派遣労働者が全員「労使協定方式」を採用している場合は、「派遣労働者を協定対象労働者に限定する」と記載しておくと良いでしょう。

 

派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度

「派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度」に関しても、追記が義務付けられました。

同一労働同一賃金を考慮する上で重要なのが、業務の内容と責任の程度で、派遣元管理台帳にも責任の程度を記載することが必要となっています。

ここでいう責任の程度とはどのようなことを書けば良いのか、派遣元管理台帳具体的にどこまで記載すればよいのか悩む方もいらっしゃるかもしれません。

労働者派遣事業関係業務取扱要領によると、「チームリーダー、副リーダー等の役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りるが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましい」とされています。

しかし、役職に就いていない派遣先の正社員と派遣社員では、トラブルや緊急対応、成果への期待・役割など、責任の程度が全く同じとは言えない場合も多く、単に派遣労働者の役職の有無のみの記載では不十分と言えます。

役職の有無に加えて、比較対象労働者の待遇等に関する情報提供に記載されている「権限の範囲」、「トラブル・緊急対応」、「成果への期待・役割」、「所定外労働等」程度の内容を記載しておくと良いでしょう。

厚生労働省による記載例には、「責任の程度:副リーダー(部下3名、リーダー不在の間における緊急対応が週1回程度有)」などと書かれていますが、派遣スタッフの場合は役職がないケースや、部下がいないケースも多いと思います。

その際は、派遣元管理台帳に「責任の程度 役職を有しない(所定外労働なし、部下なし)」などと記載すると良いでしょう。

 

雇用安定措置を講じるに当たって聴取した希望の内容

派遣元管理台帳の追記事項にもう一つ、「雇用安定措置を講じるに当たって聴取した希望の内容」があります。

追記内容について解説する前に、まずは「雇用安定措置」についてみていきましょう。

雇用安定措置とは、派遣社員が3年以上同じ職場で働きたいと希望した際、法律上契約が打ち切られてしまうため、派遣元が講じる措置のことを指します。

同じ組織に継続して3年間派遣される見込みのある有期雇用派遣労働者に対し、派遣元が契約終了後の雇用を継続させるため、下記いずれかの措置を行うことが義務付けられました。

 

・派遣先への直接雇用の依頼
・新たな派遣先の提供 (能力、経験等に照らして合理的なものに限る)
・派遣元での無期雇用
・その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)

 

2021年の法改正で、派遣元事業主は、雇用安定措置を講じるに当たって対象となる派遣労働者が希望する措置の内容を聴取し、その内容を派遣元管理台帳に記載しなければいけないと規定されました。

派遣元管理台帳への記載にあたって、希望する雇用安定措置の内容を派遣労働者に聴取した日や希望する雇用安定措置の内容を複数、優先順位とともに記載する必要があります。

希望の聴取は雇用期間終了間際に行うのではなく、時間的余裕をもって行っておくことが望ましいでしょう。

 

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派遣”先”管理台帳との違い

派遣元管理台帳は、派遣社員の雇用環境を守り、労働環境の適切な管理と確認を行うために派遣元労働主が作成するものですが、派遣労働業の重要書類としてもう一つ、「派遣先管理台帳」があります。

派遣先管理台帳は、派遣スタッフの労働日や労働時間などの就労実態を記載する書面のことを指し、派遣社員を受け入れ就労させている企業が作成しなければならないと義務付けられています。

派遣スタッフが在籍している企業では、スタッフの就業実態を正確に把握するために派遣先管理台帳を作成・保管し、記載内容を一定の期日ごとに派遣元に通知しなければなりません。

派遣先管理台帳も、派遣元管理台帳同様、記載内容が多岐に渡り、派遣スタッフごとに日々記録する必要があります。

派遣スタッフを受け入れて就労させている企業の事業所の人数が、派遣スタッフを含めて5名以下の場合は、派遣先管理台帳を用意する必要はありません。

事業所の人数が5名以下の場合は派遣先管理台帳の作成・通知義務がありませんが、何かあった際にいつでも勤務状況を把握できるよう、情報を整理、管理しておくと良いでしょう。

派遣スタッフの勤務状況を把握し、派遣元に通知すべき事項の記載漏れなどによるトラブルが起こらないようにするため、派遣先管理台帳の正しい書き方を把握した上で適切に管理しましょう。

 

派遣元管理台帳の保管方法

派遣元事業主は、派遣元管理台帳を 3年間 保存しなければならないと法律で定められています。

派遣元管理台帳を保管する理由の一つに、派遣終了後に問題が発生した場合に、就業時の状況を確認できるようにすることが挙げられます。

派遣元管理台帳を保存すべき期間の計算の起算日は、「労働者派遣の終了日」で、保存は事業所ごとに行わなければなりません。

派遣元管理台帳は、紙ベースまたはデータベースで保管しましょう。

データの保管は、データの消失を防ぐためハードディスクやUSBメモリに書き出すか、クラウド管理が安心です。

紙での保管の場合も、万が一に備え、スキャンしてデータ化しておくことをおすすめします。

 

未作成、紛失時の罰則は?

派遣元管理台帳の不備については、行政指導や罰金刑、許可の取り消しなどの罰則が定められています。

派遣元管理台帳を作成しなかった場合や紛失した場合、またはそれを3年間保存しなかった場合には、30万円以下の罰金刑の規定が設けられており、罰金刑を受けた際には労働者派遣の許可が取り消されることもあります。

厚生労働省による労働者派遣事業に関する指導内容の主なものとして派遣元管理台帳の不備が挙げられるなど、派遣元管理台帳に関する法令違反は毎年多数指摘されています。

派遣会社はリスク管理の観点からも、派遣元管理台帳を法律の規定どおり作成し、確実に保管しておくようにしましょう。

 

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クラウド人材派遣管理システム「派遣元管理台帳」は、派遣スタッフの雇用環境を守り、労働環境の適切な管理と確認を行うための重要な資料です。

派遣元管理台帳の作成・保管は派遣会社に義務付けられているものの、派遣法や記載内容について詳しくない場合は、間違いや漏れ、それに起因するトラブルが生じがちです。

そういったことが起こらないよう、人材派遣会社に確認を行いながら派遣元管理台帳の作成及び適切な管理を行いましょう。

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フォーマットはエクセルで提供されており、レイアウトをオリジナルに変更することもできます。

派遣元管理台帳は派遣スタッフそれぞれについて作成しなければならず、手間も時間もかかります。

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